思い出の釣行 山形 荒川上流

2010年6月 会社の大先輩であり、釣友の渓英さんと行った山形荒川の釣行記です。それから数年後、我々の前では決して弱音をはかなず大病と闘い続けた渓英さん。残念ながら亡くなられました。

この釣行記は渓英さんが自身で綴ってくれたものです。渓英さんの釣り人生で良き想い出の1ページになった釣行でした。

 

今回の釣行は私にとって、行って良かった!と言うものでした。
幸渓くんに「荒川源流に行きましょう」と言われ、秩父の荒川かと思いきや「山形ですよ」と言われ、思いもよらないばかりか、私の中では想像もしなかった場所でした。慌てて地図を見たり、WEBで調べたりしたところ、川も大きく一旦雨になるとかなりの暴れ川になり、滝や大淵があって、高巻きや下手をすると泳ぎ等もあって、源流釣行のメッカだと言う事が判った。ましてや土〜日の1泊だし東京からだと片道7時間はかかり、金曜の夜出発だとほとんど寝ないまま、重いザックを背負って山道を歩かねばならない。そんな事を考えると、とても70を過ぎたおじさんが、幸渓君が目指す曲滝なんぞまでは行けそうもない。「角楢小屋(カクナラ)くらいまでなら・・・・」なんて渋っていると「大丈夫ですよ!もう少し上まで行けますよ、私が連れて行きますよ!」と幸渓くんの励ましの言葉があって、今回は力持ちのTくんも一緒だし、じゃあ行けるとこまで行ってみるかと腹をくくった。

 

 

 

6月25日出発の日、19時30分幸渓くんの車で我が家を出発、関越道〜北陸道〜日本海東北道とひた走り、小国町五十沢の針生平(はんなり)の車止め駐車場に2時30分到着、早速車中で仮眠の体制に入る。しかし、暫くすると隣の車でガサゴソ、見ると出発準備をしているようで、時計を見るとまだ3時30分。「登山ですか?」と聞くと釣りだとのこと。常連さんなのか単独で角楢沢に入渓するとのことで、そそくさと出かけて行った。4時になるとうっすらと明るくなってきた、朝靄が立ち込めその向こうに第一の吊り橋の大石橋が見えてきた、こんな朝早い景色を見るのは久し振りで気持ちの昂りを感じる。どんどん明るさが増し川の様子が見えるようになり、綺麗な水とまだ新緑の幾分残ったブナの森も見えてきた。天気は良さそうである。

 

 

 

4時50分、すっかり明るくなった川を見ながら、久し振りにザックの重みを感じ出発、すぐに25センチほどの板が敷かれた最初の吊り橋を渡る。先ずは角楢小屋を目指して出発だ。天気も良く木々の緑が生い茂り、道も若干の上り下りがある程度でほとんど平坦で歩きやすい、その為かこの私でもあまり疲れを感じなかった。約40分で第2の吊り橋白布橋に到着、ここの橋は鉄板が掛けられただけ。鉄板の幅が15センチほどで距離が長く結構揺れた。また、この橋の下にはコンクリートで作られた飛び石状の潜み橋作られていて、水の少ない時には渡れるようになっていた。ここで道は右岸になり、またしばらく気持ちの良いブナの森を歩く。幸渓シェフの今夜のメニューの材料のウド・アザミ・コシアブラ・ヤマブドウの葉等を探しながら又40分ほどで第3の吊り橋に到着。この橋は一層狭くなり直径10センチほどの丸太が1本だけ。雨でも降ったら滑りそうだ。両側の鉄ワイヤーを手がかりに慎重に渡った。渡りきってやや長い急坂を上ると突然目の前が開けて角楢小屋が現れた。

 

 


6時半に角楢小屋到着。中は結構広く4〜5人は横になれそうだ。囲炉裏もあり快適に泊れそうだったが今回は先客がいて、小屋の前のテーブルには前夜の食事の岩魚の骨やコシアブラのテンプラが残っていた。
小休止後6時50分テン場に向け出発、清々しい木々に囲まれた平らな道はやや川から離れ瀬音も聞こえず続いていた。7時30分急に瀬音とともに川が見えた。幸渓君の「テン場だ!」の声。少し川の方に降りると大玉沢と本流の出会いが眼下にあり、少し高台に三ツのテントが楽に張れそうな平らな場所があり絶好のテン場である。幸いに先人ナシ。とうとう来たぞという気持ちで川を眺めれば、歩きやすそうな河原に、ところどころ釣りポイントを作りながら透きとおった水が上流に続いている。重いザックを下ろしテントを設営する。

 

 

 

さあ〜釣りだ!釣りだ!と8時40分河原に降り立った。一投二投と竿を振るも反応ナシ、水温7度渓相も水も申し分ないのだが、先へ進めども魚の反応が無い。ようやくT君がまあまあのサイズを1匹かけた。「ヒョットして本日の最初で最後かも」なんて冗談で言っていたが、とうとう大きな釜を持った鱒止めの滝まで来てしまった。この釜は大きすぎてテンカラでは太刀打ち出来そうにない。

これを越えるには左岸から巻くしかない、かなりの急登だがルートを見つけ、まずT君が登り私の為にロープを垂らしてくれた。お陰であまり力を使うことなく登れた。そこから滝上へのルートは意外と踏み跡があって判りやすかった。
滝上に出ると、広い河原になっていてテントが張られていた。11時になっていたので、少し早いが満足な朝食もしてなかったので昼食とした。ちょうど綺麗な雪解けの水もあり、幸渓シェフ自慢のソーメンだ。茹でてタモを使って冷やし蕗の葉に盛りつけられ、天気も良く汗ばんだ体に浸み込む最高の美味さだった。

 

 

 

 

 

12時30分釣り再開、テントの人は釣ろうという気配が無いので、挨拶して先へ行かせてもらった。ところがそこを過ぎると急に魚の反応が出始め、先ずはT君に来てすぐに私にも23僂きた、ここの岩魚は太っていて綺麗な魚体で流石源流の岩魚と言う引きの強さで、竿の感じでは実際より4〜5僂和腓く感じる。しばらくして幸渓君が私の目の前でかけた時など見ていて尺物が来たかと思ったくらいだった。少し行くと地元の人らしき二人組が下ってきた、話を聞くと「今日は魚の出が悪いよ。昨日かなり入ったようで、魚の処理跡が行き止まりにあるよ。」と下って行った。彼等はかなり朝早く入ったのか?彼等と我々では満足の感覚が違うのだろうか。彼ら先行者が居た割には魚の出がまあまあと感じた。一時間ほどで各自4〜5匹は釣ったころ、目の前に見事なスノーブリッジが現れた。ナベクラ沢の出会いだ。スノーブリッジの下は青々と水を湛えた大きな淵となっていて泳ぐ以外通れそうもない、先程の彼らが言った行き止まりだ。我々も引き返すしかない、空模様も怪しくなってきた。

 

 

 

3時30分テン場着、予報では曇り程度のはずだがその頃になってますます空模様が怪しくなってきた。ともかく着替えて焚火に火をつける、火がつくと周りの空気が暖まり気持ちも何となくホットする、そうなると腹が減る、少し早いが5時幸渓シェフが用意してくれた、塩チャンコに舌鼓、そのスープに麺を入れて塩ラーメン、美味い!いつもながらお世話になります。腹が膨れると今度は睡魔が襲ってくる、霧雨が降ってきた、しかし、テントの上は大きなブナが茂っていて雨をそれほど感じない、7時、先ず少し寝ようと全員テントに潜り込む、睡眠不足もあってアット言う間に意識不明に、しばらくすると外で幸渓君の声がする、時計を見ると9時、起きて行くと「頭が痛い!」と言葉の感じもやや興奮気味、どうもテントの中に防虫剤を撒きすぎたらしい。T君も起きて来たので焚火を大きくして、3人で話をするも幸渓君の容体はあまり良くならない、幸い私が睡眠導入剤を持っていたのでともかく飲んでもらった。

 

 


その頃になって雨が本降りになってきた、テンプラなんて出来たものではない、薬が効いたのか幸渓君が少し良くなったので、ともかく私のテントで一緒に寝ることにした。夜中尿意を催し目覚めると、雨音が一層強くなり大玉沢の水音もかなりの水量を感じさせるものになっていて、テントの外に出るのも勇気がいった。ともかく沢の水がテン場まで来ない事を確認して急いでテントに戻った。

一眠りすると今度はT君の声がする。時間を見ると4時もう薄明るくなっていたが雨は止んでいなかった、「テントの中が水浸しですよ」と、もう合羽を着て彼が外に立っていた。雨は止みそうにない。川を見ると泥水が濁流となっていて荒川の語源を納得させるものになっていて、釣りどころじゃないので即撤収を決定。合羽を着こんで身支度を整え、ビショビショのテントをたたみザックに押し込んだ。

 

 

 

5時50分忘れ物を確認してテン場を後にする、川は昨日と様相を一変させていた。ブナの大木から滴り落ちる雨粒を感じながら、黙々と来た道を歩き、滑りやすい3ツの吊り橋も慎重に渡り8時30分駐車場に無事到着。川の水が普通なら渡渉でも出来るくらいなのに増水すると吊り橋の有りがたさを痛感する、作ってくれた人、保守管理をしてくれている方の御苦労に感謝である。角楢沢出会いにかかる吊り橋から川を見た幸渓君が濁流の端の溜まりに岩魚の群遊を発見。雨が小降りになったこともあってT君が挑戦するも2〜3度あたりがあったものの釣る事は出来なかった。

ずぶ濡れで駐車場に到着。無事の帰還と釣行の終了を記念してノンアルコールビールと缶コーヒーで乾杯!2日目が雨で残念でしたが、私としては1日目だけでも大満足で本当に来て良かった、私の程度を考え連れて来てくれた幸渓君、力強くサポートしてくれたT君に感謝である。また、帰路に温泉と偶然見つけた美味かったラーメン!体力的不安があった釣行だったが、楽しめた満足感!帰りの車中でグーグー寝てしまった事を両君にお詫びしたいと思います。素晴らしかったブナの森と、力強かった源流岩魚にも感謝。

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